飛蚊症とは
飛蚊症(ひぶんしょう)とは、蚊が飛んでいるように見える症状という意味ですが、蚊のような虫以外にも水玉、黒いスス、糸くず、おたまじゃくし、輪などが見えることもあります。色も黒いものから透明なものまで様々で、数にしても1個から数個、時には多数生じることもあります。これらは目を動かすと、目と一緒に動いて見えます。
飛蚊症の原因
本来なら透明な硝子体(眼球内を満たす透明でゼリー状の組織)に、何らかのきっかけで「濁り」が生じると、その濁りが網膜に投影され、目の前に見えているような状態をもたらします。これが飛蚊症の正体です。
飛蚊症の主なタイプ
先天的な飛蚊症
胎児のとき、硝子体の中には血管が走っていますが、通常この血管は出産までに消失します。ところがその血管の一部、または血管周囲組織の一部が生後も硝子体に濁りとして残ることがあります。こうした先天的な濁りによる飛蚊症は、視力に問題が無ければ治療を急ぐ必要はありません。時々検査をして異常が無いようなら、放置しても構いません。
生理的飛蚊症
加齢やストレス、目の疲れなどによって発症する場合を生理的飛蚊症と言います。生理的飛蚊症には特に有効な治療方がありませんので、あまり神経質にならず、慣れていくことが大切です。ただし、飛蚊症に気づいたら、自己判断で生理的飛蚊症だなどと決めつけたりせず、眼科を受診し、きちんと原因を特定してもらいましょう。
後部硝子体剥離による飛蚊症
40歳を過ぎた頃から、硝子体の組成は変化し、硝子体内部に液体が溜まった小部屋のようなものができてきます(離水)。この「離水」によってできた小部屋は、やがてその後方の壁が破れ、液体が流れ出してしまいます。その結果、前方には収縮した硝子体、その後方には液体に変化した硝子体が溜まります。そもそも硝子体は網膜と軽く癒着していますが、硝子体の収縮と前方への移動のために、この癒着は剥がれます(後部硝子体剥離)。この「後部硝子体剥離」が、よく突然の飛蚊症を招きます。後部硝子体剥離は老化現象ですから、それによる飛蚊症も特に治療の必要はありません。しかし、後部硝子体剥離が進行すると、網膜剥離などを引き起こすリスクがあるため、経過観察が必要です。
網膜裂孔・網膜剥離による飛蚊症
網膜裂孔とは、網膜と硝子体の強い癒着によって、引っ張られた網膜が裂け、穴が開く疾患です。このとき網膜を走る血管が破けて出血すると、激しい飛蚊症を招きます。
また、網膜裂孔は、網膜剥離へと進行することがあります。網膜剥離は、網膜が剥がれることで視野狭窄や視力低下を引き起こし、放置すれば失明の危険も生じる恐ろしい眼疾患です。
網膜裂孔が起きている場合は、網膜剥離を起こさないように、光凝固法が行われます。レーザーを照射して裂けた部分を固め、網膜が剥がれないようにするのです。
網膜剥離を起こしている場合は、剥がれた網膜を元の場所に戻して固定する必要があります。そのために、白目の周囲にシリコンでできたバンドを巻く「強膜バックリング法」や「硝子体手術」を行います。
また、網膜裂孔や網膜剥離の場合は飛蚊症のほかに、存在しない光がチカチカ見える「光視症」が起こることもあります。
飛蚊症になったら眼科を受診
飛蚊症は自覚症状に乏しく、痛みも無いことが多いので、大したことはないと考え、放置してしまうことが少なくありません。確かに飛蚊症の大半は放置しても問題の無いものなのですが、なかには網膜裂孔や網膜剥離などによるケースもあります。失明などの事態を避けるためにも、飛蚊症になったら、早めに眼科専門医による診察を受けることをお勧めします。特に浮遊物の数が増えたり、見え方が変わったりしたときは要注意ですので、こうした場合は必ず受診してください。